書評 川上未映子「春のこわいもの」(新潮文庫)

芥川賞作家 川上未映子の短編集です。6編の短編がおさめられています。

コロナの頃に書かれたものが多いのか、外出禁止やマスクについて書かれたりしています。

一番印象に残ったのは「ブルー・インク」という作品。

高校生の男女の話です。高校の自転車置き場で知り合って、仲良くなりお互い好意はあるけどまだ付き合ってるともいえないそんな二人。

男の子が彼女からの手紙を亡くしたところはら物語は始まります。

彼女はもともと「書くことがこわい。残ってしまうから。」という人間で、手紙はそんな彼女が気持ちを許した彼に渡した大事なものでした。

男の子は彼女に(おそらく学校で)手紙を亡くしたことを伝えます。

彼女はショックを受け、夜の校舎に探しに行くと言います。

もちろん彼も一緒に行くことになり、夜の校舎に二人で行くのですが、そこでの二人の感情の動きが、なんというか読んでるこちらの胸がギュッとなるような感じで描かれています。

女の子が悲しくて泣き出したり、男の子が少し苛立ったり。探してる途中で男の子が彼女に性欲を感じたり。

結局、手紙はみつかりません。

翌日、(たぶんコロナのせいで)学校が一斉休校になるところで物語は終わります。

休校が決まるなか、男の子がなんだか呆然としてる(もちろん休校ではなく彼女とのあれやこれやが原因で)感じもとてもいい描写です。

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この記事を書いた人

はじめまして。会社をセミリタイアし、現在第二の人生を模索中です。読書と日常生活について投稿していきたいと思います。

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